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ちらっと見た記事でし...

ちらっと見た記事でしたが内容が衝撃的で一気に読んでしまった「演劇制作のリアルでブラックな日々」

これを読んで自分の経験にもいくつか当てはまることはあったなぁと思ったので書いてみました。
今の若いギタリストに充てはまるのかどうか分かりませんが参考までに。

僕は広島の音大を卒業して一年間研究科で勉強した後、上京しました。
留学をするか上京するかで考えて、金銭的に留学は無理そうだし、最終的に自分が仕事をしたい環境はどこだろうか?
色んな人が集まる場所で切磋琢磨したいと思い、広島から上京しました。

予想はしていましたが、最初は殆ど何の仕事もありませんでした。

上京してから2年くらい某パルコの中にあったスーパー、ピザの宅配、警備員、工場でのライン作業、引っ越しのベース、再びスーパーなど、様々なバイトをしながらギターに支障が出ないようなシフトを選びつつ、基本的にはただバイトをしているだけの日々という感じでした。

そして上京してからレッスンなども全く受けれていませんでした、正確には受ける時間やお金が無かった。

今はそのお陰で、その後ギターで生計を立てる事が早かったと思っていますが、当時は自分が他者と、一緒にギターを勉強している人達と違う流れの中に存在していて、他と関わること無く、ただ独り部屋でギターを弾き続けているだけ、ということにとても大きな不安を抱いていました。
その不安を打ち消そうと猛烈に、はかば狂ったように練習していた事は覚えています。

上京して半年、なんとかしなくてはとネットで色々検索すると「コンサート出演者募集」みたいな宣伝があり、そこに応募すると出演が決まりました。

それと同時期に某都内プロオケのオペラに出ることになって、それなりの期間の拘束が発生し、そのリハーサルに出るためにシフトの融通がきかないバイトをやめました。

それで一時的に収入ストップしてピンチになりすぎて、バイト給料日を翌日に控え、なんとリハーサルへ向かうための電車賃がないところまで来たので、同門の先輩に新宿駅まで来てもらって、改札口で1000円を借りて電車賃に充て、その日のリハーサルを乗り切りました、今考えたら恐ろしい話しですね・・・

そして前述の応募したコンサートのチラシが届いたのですが、中に大量のチケットが入っていて「ノルマ」です、と書いてありました。募集要項にかいてなかったじゃん、金額にすると○○万円分。

でもそれなりのホールだし、みんなそうやってプロになっていくのかなぁと田舎から来た何も知らない僕は、オペラの仕事で得たギャラの殆どをこのノルマの支払いに充てました。
上京したてで知り合いもいませんからね、そのチケット売るどころかあげる人もいませんでしたね。

そして迎えた本番当日、僕以外に数人の出演者でコンサートでしたが、300から400くらいの客席には大きな花を抱えた社長風の男性一人しかいませんでした。

出演者の一人であった女性がどうやらお目当てだったらしく、その人の演奏が終わったら壇上に上がってきて花をあげたら去っていき、客席は0人になりました。
ああ、これは詐欺にあったのかなぁと思いながら一応自分の演奏順になり、壮大なリハーサルを開始しました(笑)

この何年か後に同じホールでコンクールが開催されて、この時のおかけかとてもリラックスして演奏して賞をとれたという思い出もあります(笑)

他に現在考えたら本当にあり得ない環境での仕事は沢山ありました

レッスンの仕事あげるから、とある楽器店に言われ、言われたその日に伺ったらさっき他の人に決めたから白紙ねといきなり言われたり、仕事終わった後にこのチケットは私の取り分だから!といって売り上げ9割持ち逃げした共演者など。

それでもある時期までは、いや、これを沢山こなして乗り越えた先に行くんだ!
とメンタルメンタルで乗り切っていた時期はあったのですが、その考えは頑張れば頑張るほど悪い流れを生んでいき、もしかして音楽で食べる事は不可能なのでは?と当時は思っていたと思います。

その流れを生んだ依頼や環境を今では徹底して断っています。
①内容、報酬、日時などを明記していない依頼
②明記してあってもとても低い額で「君しか出来ないんだ」と言ってくる輩(普通逆ですよね)
③ちょっと遊びにくるついでに弾いて下さいという文言
④大量のアレンジが発生するけど何故かアレンジ代がない
⑤自主コンサートの時にチラシ作ってと軽くいってくる輩(永遠に変更点を伝えてくる、自分で作って下さい)など、
日常的に存在していたブラックな部分とは随分前から意識的に距離をとりました。

そうすると不思議と回りに良い人が多く集まってきてチャンスが訪れるようになり、そのチャンスを毎回「最後のチャンスだ」と思って一つ一つ仕事をしてきて10数年が経ちます。

その数々のチャンスも決して自分が100%やりたい事とかではなかったのですが、自分がそれらのチャンスを逃していたら、ずっとあのブラックな世界にいたのかなぁと考えるとたまに恐ろしい気持ちになる時があります。

上京当時に自分が思い描いていた音楽人生とは別の道を進んではいるのですが、尊敬する音楽家が周りにいて、その周りの人達のおかげで、自分が想像することができなかった道に進めていると現在では思っています。

それらの経験からか僕は常々ギターの生徒に「頑張るな」と言っています
みんな最初にギターの練習を頑張って来るのですが、先ずは自分が頑張ろうとしている事は正しいのかどうか、その方向性を見極めて欲しいのです。
そしてその見極めのために先生が必要なんだと考えています。

作曲家や曲のこと、アナリーゼ、運指のこと、等々、それらの環境がきちんと整っていれば自ずとそれなりの結果が出ると思うのですが、いきなり楽器を弾いて練習だけを頑張るブラック練習では、上記の僕の20代前半のような事態がかなりの確率でギター上で発生します。

練習を始める前に良く道筋を確認して、そこから練習を始めれば、あまり辛い事態にはなりません。

人生もきっとそうなのかもなぁと、上京して頑張ろうとしている当時の僕に伝えてあげたいです。
タイムマシン作ります。



by junpeiohtsubo | 2021-04-15 16:59 | Comments(0)

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